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BLOGはたらく石

category:ワタシ事

8月8日

父の遺言。

2025/8/8 父の一周忌を迎えた。

一年前…

「お父さん。ともちゃんとこにも来た?」

 

朝、倒れた父が病院に搬送され

夕方にはまた来るから。と一旦仕事に戻った私は、着ていたスカートがしわになるのが気になり

部屋着に着替え、二階のオフィスで図面を描いていた。

ガタガタと一階のオフィス扉が開き誰か来たので、慌ててスカートに履き替え降りて行ったら

ドアは閉まってる…そうだわ扉開いたらチャイムなるのに鳴ってないじゃない…

ってくらいで特段不思議に思わず仕事に戻る。

その晩父は亡くなった

余命3カ月と、ドラマのような主治医のセリフに現実味は感じられず

まだ死ぬ気がしないと、弱音を吐くことなく宣告から1年以上生きた父。

父は一度も涙を見せなかったし、家族の誰も父の前では泣かなかった。

 

治療をしてほしいと家族の思いを汲んで

入院した巨大な病院で与えられたのは、最上階の空と山と町が一望できる部屋。

気持ちいい。と写真を撮っている父の無邪気な姿。

孫である息子が、ぽそっと「天国に一番近い部屋なんだ…」

涙が噴き出した。

 

 ↓ 父の遺影のピースにちなんで✌

倒れた父が、もう生きて家に帰ることはありません。と主治医に告げられた母は

いそいそと、お父さんにはこの服が似合うから。と準備してきた服を並べて私たちに見せてくれた

そしてベルトを忘れたことに気づいて慌てる

もう、歩いて帰らんのだからベルトはいらんよー。という妹

そりゃそうだ。と意識のない父の傍らで思わず笑う不謹慎で陽気な家族

…こんなくらいでいいと思った。

 

書道を嗜む父は「8月に逝く」と書にしたためて、それを遺影のように抱え写真まで撮っていた。

決めたら叶ってしまうから、もう少し延期してほしいと頼んだが、

予定が狂うから8月に逝くと譲らなかった。

父は〈天国に一番近い部屋〉での治療がとても辛かったので

もう絶対病院に入院しないことも決めていた

予定通り、

8月8日の朝に倒れ、その夜に逝き、明け方には家に帰ってきた。

 

決心したことは叶うんだな。

父が、最後に会いに来てくれた時。

余命宣告を受けてから、その場面を想像しては、やっぱ怖いなって…思ってたのに

全く怖く感じなかった。

妹曰く、そういうのは怖く感じないものよ。と

彼女は仕事場に向かおうと車に乗り込んだ時

横に誰か立ってる気配を感じお父さんが来たんだと確信したらしい

イメトレをしていたのに…私は鈍感すぎね。

 

「ともちゃん。借金はどうにかなるよ」

経営者だった父が、どんどん仕事でチャレンジする私にくれた最後の言葉。

父らしいし、私らしい…フフフ

 

 

 

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